伝え方の引き出しを増やす 〜ソーシャルスタイル理論で考えるコミュニケーション〜

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はじめに

仕事をしていると、同じことを伝えているつもりでも、伝わりやすい人と、そうでもない人がいる気がします。

例えば、こんな場面です。

  • 詳しく説明したつもりでも、「まず結論を知りたい」と言われた
  • 変更点だけを伝えたら、「背景も知りたい」と言われた
  • 「良かったです」だけより、具体的にどこが良かったかを聞けると受け取りやすい

どれが正しい、どれが間違っているという話ではありません。 人によって、受け取りやすい順番や、安心しやすい情報の量が少しずつ違うのかもしれません。

以前、研修でソーシャルスタイル理論を知りました。 改めて調べてみると、実務では「相手を分類する」よりも「自分の伝え方を増やす」ために使う方がしっくりきました。

この記事では、ソーシャルスタイル理論を、人を型にはめて分類するためではなく、仕事のやり取りを少し楽にするための考え方として整理します。

さまざまなコミュニケーション


1. ソーシャルスタイル理論とは

ソーシャルスタイル理論は、人のコミュニケーションや行動の傾向を考えるためのモデルです。 公開されているモデル紹介では、ドライビング、エクスプレッシブ、エミアブル、アナリティカルの4つのスタイルが紹介されています1

この考え方では、主に次の2つの軸で傾向を見ます2

  • 主張の強さ
  • 感情表現の強さ

ただし、今日は「あなたは○○タイプです」と決める話ではありません。 人は相手や状況によって話し方が変わります。 ここでは、伝え方を選ぶヒントとして見ていきます。


2. 4つのスタイルをざっくり見る

4つのスタイルは、それぞれ「伝わりやすい形」が少し違います。 以下は、仕事の会話で使うことを想定した整理です。

スタイル伝わりやすい伝え方つまずきやすい伝え方伝えるときの一工夫
ドライビング結論から簡潔に伝える前置きが長く、要点が見えにくい最初に「結論は○○です」と置く
エクスプレッシブアイデアや選択肢も一緒に話すできないことだけで話が終わる難しい点だけでなく、できそうな案も添える
エミアブル相手の状況にも配慮して伝えるこちらの都合だけで急に伝わる急ぎ度や、相手の作業状況にも触れる
アナリティカル判断材料も一緒に説明する前提や条件が少ないまま進む前提・条件・比較材料も一緒に渡す

ここで知ってほしいのは、4つの名前そのものではありません。 自分や相手がどのスタイルに近そうかを考えることは、伝え方を調整するヒントになります。 ただし、1つに決めて枠にはめる必要はありません。 「この場面では、どんな伝え方だと受け取りやすいだろう」と考えるための材料として見てもらえると、実務でも使いやすいと思います。


3. 実務では「人や状況による違い」として見る

コミュニケーションがうまくいかないとき、つい「相手が分かってくれない」「自分の説明が下手だった」と考えてしまいます。

でも、少し見方を変えると、結論、背景、目的、相談など、必要としている情報の順番が違うだけかもしれません。

これは、人による違いだけで決まるものでもありません。 プロジェクトの状況によっても、欲しい情報や伝えたい情報は変わります。

例えば、緊急度が高い場面では、背景をすべて理解するよりも、まず結論を聞いて早く手を動かしたいことがあります。 一方で、順調に進んでいる場面や、これから方針を決める場面では、背景や目的を共有した方が納得して進めやすいこともあります。

どちらが良い、悪いではありません。 そのときの状況に合った伝え方を選べると、仕事のやり取りは少し楽になります。

同じモデル紹介では、相手に合わせて自分の振る舞いを調整する力を「Versatility」として扱っています1。 この記事ではこれを、相手に届きやすい入口を選ぶための小さな調整として考えます。

話す順番


4. 私が一番参考になったこと

今回調べて一番参考になったのは、4つの分類そのものよりも、「なんとなくしっくりこない」と感じた場面で、自分が何に引っかかったのかを考えやすくなったことです。

例えば、私は指示を受けたときに、今日どこまでやればよいのか、その後に何を予定しているのかが分からないと、不安を感じやすいです。 誰と何を分担していて、自分の作業がそのうちのどこなのかも気になります。

以前は「なんとなく進めづらい」「少ししっくりこない」と感じるだけでした。 でも今は、少しだけ分解できます。

  • 今日どこまでやればよいか知りたかったのかもしれない
  • この後に何を予定しているのかが見えていなかったのかもしれない
  • 分担の中で、自分の作業がどこなのかを確認したかったのかもしれない

自分が何に引っかかっていたのかを少し言葉にできるようになると、相手に聞く言葉も変わります。

  • 背景も教えてもらえますか?
  • 目的を確認してもいいですか?
  • 今日どこまで進める想定ですか?
  • この後の予定も確認していいですか?

「もう少し説明してほしいです」と言うよりも、知りたい情報を具体的に聞いた方が、お互いに進めやすくなります。

相手が何を伝えようとしているのかを少しでも理解するために、自分が知りたいことを具体的に聞いてみる。 そうすると、自分も納得して作業を進めやすくなります。


5. 仕事で使うなら、言い方を少し変える

ソーシャルスタイル理論を仕事で使うなら、相手を分析するより、自分の言い方を少し変えてみる方が始めやすいです。

例えば、同じ内容でも、最初に置く言葉を変えるだけで受け取りやすさが変わります。 もちろん、いつも丁寧に言い換える必要はありません。 そのままで伝わる相手や場面なら、そのままで十分です。 少し伝わりにくそうなときに、情報を足す例として見ると使いやすいと思います。

場面そのまま伝えると少し変えて伝えると届きやすくなるポイント
報告する調べたところ、いろいろ条件がありました結論から言うと、A案で進めたいです。背景はこのあと共有します先に結論が見える
依頼するこの資料の整理をお願いします来週の打ち合わせで使いたいので、現状の課題を3点に整理してもらえますか?目的と範囲が分かる
修正依頼ここを修正してもらえますか方向性は良さそうです。1点だけ、期限に間に合うか一緒に確認したいです否定より相談として受け取りやすい
提案するB案が良さそうですB案を選びたいです。背景として、既存の運用を変えずに進められます背景が一緒に伝わる

この4つは、どれも難しいテクニックではありません。 結論、背景、目的、お願いしたいことの中から、必要なものを選んで出し方を少し変えるだけです。

チームに向けて話すときは、誰か1人の受け取り方に合わせきるのではなく、まず全員が動くために必要な情報をそろえると扱いやすいです。

例えば、結論、背景、目的、お願いしたいことの順に話します。 「今日中に見てほしいです」「気になる点があれば教えてください」のように、相手にお願いしたいことを添えておくと、動きやすくなります。

全員に同じ深さで説明しようとするのではなく、まず全員が動ける最低限をそろえて、詳しい話は後で見られるようにしておく。 そのくらいの使い方が、チームへの共有では現実的だと思います。

加えて、自分が受け取る側なら、途中で「この進め方で合っていますか?」と聞いてみることもできます。 逆にチームに伝える側なら、少し時間を置いて「進める中で困っていることはありませんか?」と確認してみようと思います。

相手に声をかけるときも同じです。 「助かりました」のように端的な言葉が届きやすい人もいれば、「どの部分が助かったのか」「どんな工夫がありがたかったのか」まで伝えた方が受け取りやすい人もいます。

ここでも大事なのは、「この人はこのタイプだからこの伝え方」と決めることではありません。 同じ声かけでも、響きやすい人と、少し受け取りづらい人がいる。 そう考えるだけで、言葉の選び方を少し変えられます。


まとめ

ソーシャルスタイル理論は、人を4つに分類するためだけの理論ではありません。 少なくとも私は、コミュニケーションの引き出しを増やすための考え方として使うのが、一番実務に合っていると感じました。

この記事の内容をまとめると、次のようになります。

  • 人や状況によって、そのとき受け取りやすい伝え方や、必要としている情報は少しずつ違う
  • 伝わりにくいと感じたときは、相手や自分を責める前に「その場で必要としている情報や、受け取りやすい伝え方が違うのかもしれない」と考えてみる
  • 4つの分類そのものより、自分が何を知りたいのか、相手にどう伝えると届きやすいのかを考える方が実務で使いやすい
  • 結論、背景、目的、お願いしたいことの中から、必要な情報を選んで組み立てるだけでも、仕事のやり取りは進めやすくなる

相手を変えるためではなく、自分の伝え方を増やすために使う。 それが、ソーシャルスタイル理論の一番実務で使いやすいところだと思いました。

参考文献


  1. “TRACOM’s SOCIAL STYLE Model™ | SOCIAL STYLE Assessment”, TRACOM Group, 2026年参照, https://tracom.com/social-style-training/model ↩︎ ↩︎

  2. “Understanding Social Style: Enhance Workplace Communication”, Lucas Downey, Investopedia, 2025年12月1日更新, https://www.investopedia.com/terms/s/social-style.asp ↩︎

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